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第三セクターの事件簿2016年09月14日

破綻した第三セクターが再生された
川崎市の第三セクター「かわさき港コンテナターミナル株式会社」(KCT)に対する損失補償契約に関する、横浜地裁の平成18年11月15日の判決は初めて「損失補償契約を違法」とした(横浜地判平成18年11月15日・金融法務1793号39頁・金融判例1258号50頁・判例タイムズ1239号177頁)。
 第三セクターの金融機関に対する借り入れに対し、出資団体である地方公共団体がその債務契約につき損失補償をすることがある。この債務保証の性質が財政援助制限法3条の地方公共団体が行う債務保証の禁止事項に反するかがしばしば問題となる。
 この判決では、原告側市民オンブズマンの市長に対する損害賠償及び川崎市が掛かる金融機関に対し不当利得の故返還要求をすることは棄却し、原告側敗訴が言い渡された。
 しかしながら、「損失補償は売上金の一部に対する損失(金融機関の場合は利息のほか元本も含む)であり、連帯保証のそれとは区別される。しかし、その内容は債務保証に近く、同様の機能・実質を有する」と一部原告側主張を認めた。原告側訴えは棄却、被告側は勝訴(結果的には一部原告側の主張を認める)判決であるがため控訴できず。
 筆者が注目するこの判示に「財政援助制限法は、占領軍総司令部の意向を反映したものであり、その制定された背景に戦前の国策会社の活動を停止させ、その復活の防止を図る意図があった」ことを指摘している。
 これは、第三セクターの援助制度は古く、大日本帝国の時代から国策による企業支援制度があったことを判示している。
 現在地方公共団体が抱える債務補償の額は2兆円を上回るとされているが、第三セクターの設立には多くの財政支援が盛り込まれ、民間企業の参入を後押ししている。財政余力の乏しい地方の自治体では大資本の参入は効果的である反面、自治体の出資には限度があり、債務保証を求められているのが現状である。
 この背景には、80年代の民活法やリゾート法による財政支援立法が制定され、官による規制の緩和が推し進められた。その結果、官と民の癒着が容易となり、陰日なたと企業支援が際限なく行われた。政府の誘導により第三セクターが増加することは、地方自治体の観点からも決して楽観できるものではなく、住民保護の観点からも債務保証に類似した損失補償の規制は図られるべきである。
 財政援助制限法の趣旨は、わが国の公私混合企業の源流から受け継がれる流れを断ち切ることにあり、その本旨を今一度捕らえよ、とこの判決は示したこととして注目する。

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